生命科学的思考 高橋祥子  書評 差別をなくすためにも広い視野が必要です。

はじめにを読んでリチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子に触れられており興味を持ちました。

利己的な遺伝子に置いて人間の行動が遺伝子そのものにより本能的に定められていると考えると多くの行動の要因が説明できるとされている。

一方で解明されていない謎もある。

人間にとって思考することは多くのエネルギーを要するためできることなら思考したくないのが人間です。

できるだけ人の意見を聞いて生きていたいと思うのは本能ということですね。

しかし思考することによってしか人間社会を目に進めることはできないため思考せざるを得ない

非効率的な行動であると分かっても人間である以上思考するしかないのが難しいところでもあり、面白いところでもあります。

本書を読んで

思考を続け進化し続ける大切さを改めて感じました。

視野を広く持つことは誰にでも可能ですがそのためには訓練が必要です。

世界を良くするためには一人一人が視野を広く持ち物事の本質を捉えられるようにならないといけない。

1章 生命に共通する原則とは何か 客観的に捉える

基本的に全ての生命活動には、個体として生き残り種が繁栄するために行動するという共通の原則がある

一見自己中心的、自分中心?に見えますが誰でもが自分だけでなく種の繁栄を願うのが本能のようです。

そもそも不死とは何だ?と本書では問いかけてきます。

銀河鉄道999のように意識を機械の体に乗せることは不死なのか?

著者はそれは不死ではないといいます。

なぜなら

身体的感覚を失くしてそれまでと同じものの感じ方ができるわけがないからだ

死とは連続性の喪失であるため体が肉体的なもので亡くなった時点で断絶が起きるのである

意識や脳が自分だとしても感覚的なものが変わってしまうとそこで一旦断絶していると考えざるを得ないということです

機械の体では暑さ、寒さや痛いという感覚が感じられなくなりますよね?

仮に感じることができる機能が付いていたとしても肌で感じていた感覚とは間違いなく別物になります。

そうなっていしまったら生き続けているとは言えないということです。

遺伝子的に見ると孤独感とは人と集団で生活することで生き延びてきた人類が、一人で生きることを避けるための機能であり

孤独を感じるのは自分が感じるのではなく

遺伝子に搭載された機能が正常に働いていると客観視できるものだ

そもそも人間は一人で生きていける生き物ではないため

一人でいることを不快に感じる機能が備わっているのです。

一人でいることが不快で仲間を求めることにより安心して生きていけるようになるのです。

身を守るために遺伝子に搭載されている基本的な機能が現在の環境でも最適なものとして働くとは限りません。

よく視野を広くもてと言われるが実際に大事なのは

視野を広くも狭くも自由に設定できる能力が必要である

視野が狭くなってしまうのにも生物的な理由がある

個体として生き残り種が繁栄するために行動するという生命原則には優先順位がある

まず個体として生き残ることが先決で個体として生存の可能性が担保されることによって初めて種が繁栄するために行動するようになります。

赤ちゃんが視野が狭くわがままなのは一人では生存できないためで、自分中心でないと生きていけないことが分かっているからです。

大人になり社会に出ると自分だけでなくパートナーや子どものことも考える必要が出てくるため、長期的な視野で物事を考えたり、他人優先で物事を考えたりと視野を広く持てるようになります。

よって大人になっても視野が狭い人はまだ自分の生存の可能性に安心できていないんだなと捉えることができます。

大人になっても視野が狭い人って幼く感じてしまうのはこういうことなんです。

子供は守ってもらわないと生きていけません。

だからこそワガママだし自己中心的なのです。そうしないと生き残れないから。

大人になるにつれそんなことをしなくても生きていけることが分かってきます。

むしろ他人のことも考えて世界のことも考えることにより、快適に生きていけることが分かってきます。

でも他人のことや世界のことが考えられるようになるのはあくまでも自分の生活の安心が保障されてからになります。

自己中心的な考え方をする大人が増えているのは大人になっても自分の生存の可能性が脅かされていると感じ続けているからなのです。

そう考えると大変な世の中だなと思いますね。

狭い視野を持って自分とは違う他者を差別の対象としてしまうと広い視野においては多様性により繁栄してきた人類そのものの否定になってしまい自己否定に陥ってしまう。

ゲノムから見ると人は全員一人一人が違い希少な存在である

自分と他人が違うのは生命の歴史からすると当たり前であり、

多様性こそが生命の特徴である

2章 生命原則に抗い、自由に生きる 主観を活かす

時間とは2つの変化の比較により生じるもの

1、自然変化

自然現象が元で起きる変化

2、環境変化

自分以外の周囲の環境の変化

3、行動変化

自分自身の個人の活動の変化

4、生命変化

個人の生命活動の変化

これら2つの変化の比較によって人は時間を感じることができるのです。

例えば自分の老化が早いとするならば

1、自然変化において地球の自転の回数と比較して自分の体力の衰え、シワの量の変化の比較により時間を感じることができる

時間があっという間に過ぎたなと感じるのは

2、環境変化と3、行動変化に大きく差がある場合のことを言います

自分が忙しく活動して大きく成長しているにも関わらず

駅前が変わらず寂れていれば変化を感じるでしょう

一方で自分がダラダラとネットを見て一時間を過ごしている間に

隣の人が宿題を終わらせていれば何をやっていたんだと感じるでしょう

快楽と幸福の違い

快楽は4の生命変化であり

幸福は3の行動変化です。

アルコールによって快楽を得るのは生命活動に変化を起こしたものであり、

自分の行動が変化するわけではありません。

利己主義と利他主義は相反するものではなく、利己主義の先にしか利他主義はないのだ

3章 一度きりの人生をどう生きるか 個人への応用

これをやり切るまでは中途の過程で何があっても後悔しない、

なぜなら自分がそう決めたからと覚悟を決めたならば葛藤はそもそも生じない

未来を見据えた上である段階で過去の決断を改ざんしないと決めること

これを達成するまでは絶対に迷わないし後悔しない

主観が見つからなければカオスに身を置け

主観的な意志を持ちたいがどうすればいいのかわからない人は

カオスな状況に身を置くべき

予測できない状況で理不尽な目に直面した時こそ自分が何を求めているかについての認識が深まる

確かに自分も体調を崩すくらいの環境の中で自分がやりたいことが明確に見つかった経験があります

知人にも仕事もプライベートも大変な状況になって初めて本当にやりたいことを見つけた人がいます。

4章 予測不能な未来に向け組織を存続させるためには 経営ビジネスへの応用

多様性の本質は同質性にある

多様性というと何が違うかという差異だけが注目されがちですが、

差異に注目すると同時に何が同じかにも注目しないと多様性の本質を見失うことになる。

企業における多様性も多様性を作ることを目的とするのではなく、

目的を同じくする同質性を集めなくてはバラバラになってしまいます。

多様性を尊重することにより世界はさまざまな考え方を尊重する風潮が出来上がってきています。

しかしだからと言って子供の虐待を許容することはできません。

権利を尊重した上で教育の方針などについてはさまざまな意見があるべきなのです。

ある特定の思考枠の結びつきが強固になりすぎたために、視野の設定を自由にできなくなった状態

イコール偏見

年齢を重ねるごとに過去に時間が蓄積され過去の影響が大きくなり偏見を持って世界を見てしまいがちです。

過去の不幸をいつまでも引きづっていたり、過去の栄光に囚われていたりします。

複数の視点を受容できるようになると不条理な現実の影響を受けたとしても

複数ある思考枠の一つであると受け止められるようになる

ある人間が何かをした場合、その人間が所属するコミュニティ全てにそういう傾向があるという

差別的な見方は、空間的視野が固定されているために生まれるものです。

そもそも人間は遺伝子レベルで見れば全人類がレアで多様性に溢れています。

肌の色や性別などの認識しやすい属性でグルーピングすること自体が無意味。

あの人は視野が狭いなどど先天的な素質かのように決めつけてしまうことがあるが、

見えている視野を共有すれば多くの場合は解決できる

5章 生命としての人類はどう未来を生きるのか

最終章ではクローンベイビーについての是非が語られています。

その上で人類はもっと上手くやれる

科学は人類にとって良いものにも悪いものにもなる。

科学とテクノロジーの発展が止められない以上、人間は良い未来を描き、

そのために思考と行動を積み重ねる存在であって欲しい

学生時代あまりというか全然理系の勉強をしてきませんでしたが、大人になって改めて科学や物理の知識は面白いなと感じる場面が増えてきました。

同時に根本の部分では社会科学や哲学的な考え方は理系的な考え方に近い部分がとても多いことを感じます。

そもそも中学、高校の時点で理系文系なんて分ける必要はあるんでしょうかね?

でも高校時代の生活を思うとそんなに勉強してる時間もなかった気もします。

難しいですね。

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