
人間関係が煩わしくて、会社を辞めて独立起業する──
そんな動機でフリーランスや自営業になる人も少なくありません。実際、会社を離れて1人で仕事を始めれば、確かにあの面倒な上下関係や長時間の会議、人付き合いからは解放されます。
でも、それは「人間関係がゼロになる」という意味ではありません。
むしろ、独立すればするほど「信頼できる他人」の存在が不可欠になるのです。
誰かの役に立たなければ、報酬は得られない
どんなに優れたスキルや知識を持っていても、誰かの課題を解決できなければ、仕事としては成立しません。
1人で働くということは、自分で営業し、交渉し、納品し、責任を取るということでもあります。
そこには「他者」とのやり取りが必ず発生します。
自分に何かあったとき、本当に1人で耐えられるか?
怪我や病気で手が動かなくなったとき。
あるいは、メンタルが落ち込んで何も手につかなくなったとき。
そういった非常事態には、頼れる他人がいなければ、仕事も収入もゼロになってしまいます。
組織の中では見えにくかった「人の支え」が、独立後は痛いほどリアルに浮かび上がってきます。
必要なのは「短く、濃く、深い関係性」
会社にいれば、何となく毎日顔を合わせることで関係性は保たれていました。
けれど、独立後は違います。
日常的な接点がない代わりに、限られた時間で、いかに深く信頼されるかが問われます。
お金やサービスのやり取りは、「信頼」がなければ始まりません。
独立すれば、自分の信用がすべて
会社にいた頃は、会社の信用やブランドを使って仕事ができました。
でも独立すれば、その看板はありません。
自分自身の信用だけが、すべてです。
つまり、過去よりももっと深く、他人から「信頼される自分」である必要があります。
人間関係が苦手な人こそ、独立は慎重に
よく「人間関係が苦手だから、1人で働きたい」と言う人がいますが、
現実には、独立後のほうが人との関係構築は難しく、負荷も高くなります。
なぜなら、会社に守られていた時よりも、
圧倒的に「自分が何者か」を明確にしなければならないからです。
限られた時間で、他人に必要とされ、信頼されなければ、仕事は継続しません。
結局、人は1人では生きていけない
極端な話、山奥で完全自給自足をするのでなければ、
社会で活動する以上、「誰かに認められること」は避けて通れません。
独立するということは、より短時間で、より濃密に、他人に自分を理解してもらう必要があるということです。
だからこそ、「1人で独立する」という選択は、「誰とも関わらずに済む」選択ではありません。
むしろその逆で、本当の意味で人間関係の本質と向き合うことになる選択なのです。